基本はオルガン針がよく見られますが、グロッツやシュメッツといった針でトラブルが回避できる場合も多々あります。
ですが、同時に針板対策や位相の調整も必要です。
多くの方がメーカー標準通りの針とボールポイント(B)の針で作業なさっていますが、実際には色々な種類の針があります。作業着にネームを入れる程度であれば何でもいいのですが、難しい刺しゅう条件になるほどに、いい方法を聞くところがほとんどない、ので四苦八苦してどうにかするというループに入るため、社長と一人で背負い込んでしまい、従って後継者にこの責任をかぶせたくないという心理になってきてしまいます。 機械の設定もありますが、メーカーでは知見が不足でよくわからないという返事、販売業者もやらないところも多く、国産刺しゅう機が持つ高い拡張性が発揮できていません。 ここではとりあえず針だけご提案したいと思います。 |
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糸切れしやすい | 糸が切れる原因は条件により多々あるので省略しますが、困ったら以下の針が向いているかもしれません。 オルガン・DBx1KNLE(ニット針だが穴が二番手大きいので糸に負担が少ない) オルガン・DBxk5LP(汎用のk5針に、フッ素コーティングで、糸の負担を減らす) グロッツ・DBxk5 SAN1(糸撚対策の針穴で、エグリの側面をナナメカット/チタンコート) オルガン・DPx134-SK1(針棒をDP用に改造、エグリの深い針で針幹強化でしなり削減) オルガン・DBxk5HP(針の温度が上がらないコーティングで糸撚をふせぐ) オルガン・UまたはSポイント(先端の変更。Uは野球メッシュ、Sは細かいニット向け) グロッツ・134 SAN6(針棒はDP仕様に。目飛び用の戦略針) グロッツ・134 SAN5(針棒はDP仕様に、糸撚対策の戦略針) オルガン・DBxk5 YORI(針先がナナメにひねってあり、刺しゅう糸の撚りに最適化) |
目飛びしてしまう | 目飛びの原因も多々あり、帽子枠のツバの方とか大型の旗など、「えっこんな所で目飛び?」という例が多いです。まずは布押エが変形していないか確認しましょう。 針だけで対策するのは難しいですが、針が曲がってしまっただけというのもよくあります グロッツ・DBxk5 SAN1(糸撚対策の針穴で、エグリの側面をナナメカット/チタンコート) オルガン・DBx1NY2(オルガンの目飛び対策針、エグリが少し深く穴形状も違う) オルガン・DBx1KNLE少し大きい太さで(ニット針/穴が大きい/糸に負担が少ない) グロッツ・134 SAN6(針棒はDP仕様に。目飛び用の戦略針) |
ニット/メッシュを縫う | ニット製品には目があるのでボールポイントは繊維を除けて針のしなりを防ぎます。 ニットの目のサイズや硬さに合わせて、ボールを選択しないと意味がありません。 B・・・一般的なニット針用。ただし品質がいいから標準というわけではありません。 U・・・ノリ付き寒冷紗はこれが最適です。硬い芯であるほど効果があります。 S・・・現在最も効果が見込める主流の針と思います。Bよりきれいに刺しゅう品質が上がるはずです(先端がテーパー形状で、貫通時に生地を動かさない) Y・・・ニットの帽子、女子高生のカーディガン、粗い目のニット用。 グロッツ・DBxk5 9ST・・・速乾ポリエステルシャツなど、針板の穴に吸い込まれやすいものがありますが、そういう時には針を細くしたいところです。9STは針の穴が縦長のため糸の引っ張り具合を優しくするようで、効果があるといわれることがあります。 |
糸が引きつれ、シワが出る | 優勝旗にぶら下げる長いリボン、学校の旗、ガーゼタオル、のぼりの生地など、薄くて密度の濃い生地は、縫っていくと縦横無尽にしわが寄っていくものがあります。場合により地糸切れして繊維を1本ピンと引っ張ったりしますが、これは針で対応できます。 オルガン・KK針(針の幹が特に細く、貫通後に生地の負担が少ない、先端も細く長い) オルガン・5ST、7ST針(穴がk5より縦に長く大きいので、糸の負担を避け目飛び対策も) オルガン・NS針(針先端が特に長く、貫通時の生地抵抗を抑える) |
粘着物の上を縫う | 現在の針では完璧な対策はとれません。ただし以下の針は相当効果があります。 糸切れなどし始めたら、穴に付着し始めているのでもう捨てるしかありません。 オルガン・DBxk5LP(汎用のk5針に、フッ素コーティングで、糸の負担を減らす) オルガン・DBxk5HP(針の温度が上がらないコーティングで糸撚をふせぐ) |
その他 | 糸切れや目飛び、あるいはある角度の縫い目がどうしても締まらない、そんな時はメカの方をいじった方が工業用刺しゅう機は早いです。どこもいじれるので拡張性が案外高いです。 1.針棒を改造しましょう。DPx5を装着できるようにするとさまざまな針が使用できます 2.針穴を大きく、または小さくしてみましょう。 3.押エの穴を拡張、または小さくしてみましょう 4.送りタイミングを変更します。バルダンならMSU、タジマなら枠駆動開始タイミング、トヨタ系なら枠タイミングの操作で、糸調子が変わります 5.釜を変えてみます。タジマ系の偏心釜またはトヨタ系のDLCコーティング釜で治まらなければ、市販のA型釜を使うと劇的に不調が解消できることがあります。改善の傾向があるならしっぽの一部を削り取り試しましょう。 ところでマジックテープの上を縫う時は、特にオスの糸切れはどうしようもありません。せめてHP針を使用して針熱を下げて糸の撚り変形を避けましょう。 |
工業用刺しゅう機向け
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